フリーランスの提案文が通らない本当の理由と、改善のための3つの確認点
先月、受講生の提案文を10本まとめて読む機会があった。どれも丁寧に書かれていたし、誤字もほとんどなかった。でも正直に言うと、クライアント目線で読んだとき、私は返事を書く気になれなかった。文章が悪いわけじゃない。でも「なぜあなたに頼むのか」という問いへの答えが、どこにも書いていなかったのだ。フリーランスとして仕事を取り始めたころ、私も同じことをやっていた。提案文が通らない理由は、多くの場合、文章力の問題ではなく、構造の問題だと思っている。
クライアントは「自己紹介」を読みたいわけじゃない
クラウドワークスやランサーズで公開されている案件に応募するとき、多くの人が提案文の冒頭に自己紹介を書く。「はじめまして、Webライターをしています〇〇と申します」という書き出しは、私が見てきた提案文の8割以上に登場する。でも、クライアントが案件を出した瞬間に何を考えているかを想像してほしい。締め切りが迫っているか、抱えている課題をとにかく解決したいか、どちらかだ。
自己紹介は必要だが、それは提案文の主役じゃない。クライアントが最初の数行で確認したいのは、「この人は自分の仕事の内容を理解しているか」という一点に尽きる。名前と経歴は、その確認が済んだあとに読まれるものだ。提案文の冒頭で使える文字数は限られているので、そこに自己紹介を置くのは、限られた時間の使い方として惜しい。
提案文が「通る」とはどういう状態か
クライアントが提案文を読んで「返信しよう」と思う瞬間は、たいてい「この人は分かってる」と感じたときだ。私がフリーランスで動いていた時期に、返信率が上がったのは、提案文の構造を変えたタイミングだった。具体的には、案件概要に書かれていた課題をそのまま自分の言葉で言い換えて、冒頭に置くようにした。それだけで、反応が変わった。
「通る」提案文は、クライアントに「自分のことを理解してくれている人がいる」という安心感を与える。それは必ずしも実績の豊富さとは関係ない。実績がゼロでも、案件の背景にある課題をきちんと読み取って言語化できれば、少なくとも「話を聞いてみよう」という段階には進める。
「通る」提案文は、クライアントに自分のことを理解してくれている人がいるという安心感を与える。
私が提案文を添削するときに見る3つのポイント
受講生の提案文を読むとき、私はいつも同じ順番で確認している。最初に「案件の課題に触れているか」、次に「自分が関わることで何が変わるかを書いているか」、最後に「クライアントが次に取るべきアクションが明確か」の3点だ。この3つが揃っていない提案文は、どれだけ丁寧でも返信が来にくい。
- 案件概要に書かれた課題を自分の言葉で言い換えているか
- 自分が担当することでクライアントにとって何が変わるかを具体的に書いているか
- 「まずはご相談ください」など、次のアクションへの誘導が一文あるか
- 提案文全体が400字以内に収まっているか(長すぎると読まれない)
- 過去の実績は案件と関連するものを1つだけ選んで書いているか
「具体性」が薄い提案文の正体
「丁寧に対応します」「スピーディーに納品します」という言葉は、提案文の中で最も意味を持たない表現の一つだと私は思っている。なぜかというと、それを書かない人がいないからだ。クライアントの立場から見ると、全員が同じことを言っているので、差がつかない。
具体性を出すのは難しいことではない。たとえば「スピーディーに納品します」の代わりに、「初稿は依頼から3営業日以内にお送りします。修正は2回まで対応可能です」と書けばいい。同じ内容でも、数字と条件が入るだけで、クライアントは判断できるようになる。判断できるということは、返信するかどうかを決めやすくなるということだ。
私が添削した提案文の中で、一番印象に残っているのは、ECサイトの商品説明文の案件に応募してきた受講生のものだった。その人は「Amazonと楽天で売れている商品の特徴を分析してから書きます」と一行書いていた。その一行だけで、クライアントが何を求めているかを理解していることが伝わった。実績はほとんどなかったが、その案件は獲得できた。
返信が来ない期間にやっておくべきこと
提案を送った直後は、返信を待ちながら不安になりやすい時間だ。私もそうだった。でもその時間は、過去に送った提案文を読み直すのに使える。送ったときの自分が「良い」と思っていた文章が、数日後に読むと「こういうことが抜けていた」と気づくことがある。その気づきをメモしておくだけで、次の提案が少しずつ変わる。
クラウドソーシングの案件は、ジャンルによって返信率の傾向が異なる。私が見てきた範囲では、ライティング系の案件は競合が多く、1案件あたりの応募数が30件を超えることも珍しくない。そういう案件では、提案文の最初の2〜3行が読まれるかどうかの勝負になる。一方、専門性の高い翻訳や業界特化のリサーチ案件は、応募数が少ない代わりに、実績の証明を求められることが多い。自分がどのゾーンで勝負するかを意識しておくと、提案文の方向性も変わってくる。
提案文は「完成品」じゃなくて「会話の入口」
私が提案文について一番伝えたいのは、提案文はそれだけで仕事を決めるものではないということだ。提案文の役割は、クライアントに「この人と一度話してみたい」と思わせることまでだ。だから、すべてを提案文に詰め込もうとすると、長くなりすぎて読まれなくなる。
400字前後で課題への理解と、自分が関わることの変化と、次のアクションを書ければ、それで十分だ。残りはメッセージのやりとりや面談で補える。提案文を完璧にしようとするより、送る数を増やしながら毎回一つずつ改善するほうが、実際には結果が出やすい。私が受講生に「まず10本送ってみて」と言うのはそのためだ。
今年の秋から冬にかけて、クラウドワークスでは年末に向けてコンテンツ制作や事務系の案件が増える時期に入る。提案文を見直すなら、案件が増えるこのタイミングが動きやすい。
提案文の改善は、一度やれば終わりではなく、案件ごとに少しずつ調整していくものだ。今日送った提案文を、3日後に読み返すところから始めてみてほしい。