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記事 · フリーランス 2025-01-27

フリーランスの単価交渉:値上げを切り出す前にやっておくべきこと

交渉の席に座る前に、すでに勝負はついている
田
田中 航
Editor
2025-01-27
制服を着た高校生の男女が街を歩いている様子

単価交渉がうまくいかない人の多くは、「交渉の言い方」を間違えているのではなく、「交渉の前の数ヶ月間」を間違えています。私自身、フリーランスになって最初の3年間はまったくそれができていませんでした。あるとき、2年半ほど継続していた取引先に思い切って単価の値上げを打診したのですが、「ちょっと今は厳しくて」の一言であっさり断られてしまいました。あとから振り返ると、断られたのは金額の問題ではなく、それまでの関係の作り方に問題があったのだと思っています(まだ完全には整理できていないのですが)。この記事では、交渉の場そのものよりも、その手前の準備期間をどう過ごすかについて、自分の経験と観察をもとに書いてみます。

よくある失敗:「急に値上げを言い出す人」になってしまう

フリーランスが単価交渉で最もやりがちな失敗は、普段まったく単価の話をしていないのに、ある日突然「実は単価を見直していただきたいのですが」と切り出すことです。取引先の担当者からすると、これは文字通り「急な話」であって、心の準備ができていません。予算の調整が必要になっても、稟議を通す根拠を作るのに時間がかかり、結果として「また今度で」になりやすい。

私がやらかしたのもこのパターンでした。2年半、毎月コンスタントに納品して、クレームもなく、むしろ感謝のメッセージをもらっていたくらいだったのに、それを「交渉の材料」として一度も使わずにいた。関係が良好だということと、単価交渉に向けた関係が整備されているということは、まったく別の話なのだと、そのとき初めて気づきました。

「実績の可視化」を日常業務に組み込む

値上げを切り出す前にやるべき最初のことは、自分の仕事が取引先にどんな価値をもたらしているかを、数字や具体的な事実で記録し続けることです。たとえば私の場合、Webコンテンツの制作を請け負っているのですが、納品物のページビューや検索順位の変化を自分でもスプレッドシートに記録するようにしました。取引先が共有してくれるときもあれば、自分でSearch Consoleで確認できるときもある。

この記録は交渉のときに使う「証拠」でもありますが、それよりも重要なのは、日常のコミュニケーションの中でさりげなく共有することです。月次の納品メールに「先月の記事、流入が1.4倍になっていましたね」と一行添えるだけで、担当者の頭の中での自分の位置づけが少しずつ変わっていきます。これを半年続けるだけで、交渉の席での会話がまるで違ってくる。

担当者の「社内事情」を理解しておく

取引先の担当者は、あなたとの契約を決める唯一の意思決定者ではないことがほとんどです。特に中規模以上の会社では、発注担当者が上長に稟議を通す必要があります。つまり、交渉の相手は担当者だけでなく、その先にいる承認者でもある。ここを理解せずに交渉に臨むと、担当者が乗り気でも社内で止まってしまうケースが生じます。

私がうまくいったと感じた交渉では、その前の数ヶ月間、担当者との雑談の中で「予算のサイクルはいつ頃ですか」「今期は新しい施策を検討されていますか」といったことを自然に聞いていました。日本の多くの企業では4月始まりの年度で予算が動くので、値上げの打診は前年度末(1月から2月あたり)に行うのが動きやすい。担当者が動けるタイミングを知っておくことは、金額の話と同じくらい重要だと思っています。

これは情報収集というより、「担当者のことを理解しようとしている」という姿勢そのものが関係を作るという側面もあります(少し計算高く聞こえるかもしれないけれど、本当に相手の仕事に関心を持てれば自然とできることでもあります)。

交渉の前に「小さな追加貢献」を一つ作る

値上げを打診する2〜3ヶ月前に、契約外の小さな貢献を一つ意図的に作るという方法があります。たとえば、普段の納品物に加えて、競合サイトの動向をまとめた簡単なメモを送る、あるいは取引先が気にしていた課題について参考になりそうな情報を共有する、といったことです。金銭的な価値に換算すると大きくなくてもいい。

この「追加貢献」のポイントは、見返りを求めるそぶりを見せないことです。あくまでも「気になったので共有しました」というトーンで行うことで、担当者の中に「この人は頼める」という感覚が積み上がっていく。そしてそれが、値上げの打診をしたときに「できれば続けてほしい」という動機につながります。打診のタイミングで関係が温まっているかどうかは、返事の速さと内容でだいたいわかります。

交渉は当日始まるのではなく、その数ヶ月前の日常業務の中で始まっている、と私は思うようになりました。

値上げを切り出す前のチェックリスト

準備が整っているかどうかを確認するために、私は交渉の打診をする前に以下の点を自分に問いかけるようにしています。全部クリアしている必要はないけれど、半分以下しか当てはまらないなら、もう少し準備期間を置いた方がいいと感じています。

打診の言葉と、その後の動き方

準備が整ったら、打診そのものはシンプルで構いません。私がうまくいったときのメールはだいたいこんな内容でした。「〇〇さん、いつもありがとうございます。来期の契約について一点ご相談があります。現在の単価について、〇〇円から〇〇円に見直させていただきたいと思っています。ここ半年での成果(具体的な数字を一行)を踏まえると、この水準でお願いできればと考えています。一度お時間をいただけますか」。これで十分です。

断られたときのことも書いておきます。断られた場合、その場で粘るのはあまり得策ではありません。「わかりました、では次の更新タイミング(〇月頃)に改めてご相談させてください」と伝えて、一度引く。そしてその期間中に、準備を再度積み上げる。私の経験では、最初の打診で断られても、6ヶ月後の再打診で通ったケースが複数あります。関係を壊さずに引けるかどうかが、長期的には一番大事なスキルだと思っています。

単価交渉は、交渉の席に座ってから始まるのではありません。その数ヶ月前から、日常業務の中でじわじわと土台を作っていくプロセスです。私もまだ毎回うまくできているわけではないし、これが正解とも言い切れない。ただ、「急に言い出す人」にだけはならないようにしようと、今も意識しています。

#フリーランス#単価交渉#クライアント関係#仕事術#独立

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